遺産の分割
相続人が複数いる場合には、被相続人の財産は、相続の開始と同時に、共同相続人全員の共有財産となり、各共同相続人がその相続分に応じてこれを共有することとなります。この場合に、共有財産となった遺産を分割して各相続人に配分し、特定の財産を特定の相続人の単独所有財産とし、又は特定の複数の相続人の共有財産とすることを「遺産の分割」といいます。 なお、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをすることとされています。また、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力が生じることとされています。 【参考】民法第898条、第899条、第906条、第907条、第909条 被相続人は、遺言で、遺産の分割方法を指定し、又はこれを指定することを第三者に委託することができます。また、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することもできます。 【参考】民法第908条 共同相続人(包括受遺者、相続分譲受人及び遺言執行者を含みます。以下同じです。)は、被相続人の遺言により遺産の分割が禁止されている場合を除き、いつでも、共同相続人全員の協議で、遺産の分割をすることができます。この協議を、遺産分割協議といいます。 遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要がありますが、共同相続人全員が必ずしも同時に同じ場所に集合して協議を行う必要はありません。共同相続人が一度に集まるのが困難な場合であっても、電話、メール、手紙等で相互に連絡を取り合い、共同相続人の全員が遺産の分割について合意をすれば、遺産分割協議は成立します。 また、共同相続人全員の合意があれば、相続人は、自由に遺産分割の方法や割合を決めることができます。したがって、必ずしも遺言による指定相続分や法定相続分に従って遺産を分割する必要はありません。ただし、被相続人が、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁じた場合には、その禁止期間が経過するまでは、共同相続人全員の合意があったとしても、遺産を分割することができません。 なお、共同相続人全員による遺産分割協議が成立した場合には、その協議の成立及びその内容を証するために、遺産分割協議書を作成するのが一般的です。 【参考】民法第907条 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができない場合には、各共同相続人は、遺産の分割を家庭裁判所に申し立てることができます。この場合に、家庭裁判所は、特別の事由があるときは、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁止することができることとされています。 ※ 家庭裁判所における遺産の分割に申立てに関する手続については、当事務所では、業務をお取扱いすることができません。 【参考】民法第907条
最終更新日:2019年11月05日