相続人
相続において被相続人の権利義務を承継する相続人の範囲は、民法(明治29年法律第89号)に規定されており、これを「法定相続人」といいます。被相続人が生前に遺言による別段の意思表示をしていない場合には、原則として、法定相続人が相続財産を承継することとなります。 【参考】民法第896条、第898条 【参考】民法第887条、第889条、第890条 被相続人の子は、相続人となります。子が複数ある場合には、それぞれが同順位で共同相続人となります。 子には、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた嫡出子のほか、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた非嫡出子、養子縁組により養親の子となった養子が含まれ、養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子となります。非嫡出子が父の相続人となるためには父の認知が必要となる一方で、母子関係は分娩の事実により当然に発生するものとされており、子が母の相続人となるために母の認知は必要ありません。また、被相続人の子が相続開始時(被相続人の死亡時)に胎児であった場合、子は既に生まれたものとみなされ、生きて出産されるのと同時に、相続開始の時にさかのぼって相続権が認められることとなります。 なお、被相続人の子が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除により相続権を失った場合には、その者の子であり、かつ、被相続人の直系卑属である者(被相続人の孫)がこれを代襲して相続人となります。また、被相続人の子を代襲して相続人となるべき者(代襲者)が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除により代襲相続権を失ったときは、同様に、その代襲者の子(被相続人の曾孫)がこれを再代襲して相続人となります。ただし、養子縁組前に生まれた養子の子は、養親の直系卑属ではないため、養親の相続において、養子を代襲することはできません。 【参考】民法第886条、第887条、第898条 第1順位相続人(代襲相続人を含みます。)に該当する者がいない場合(第1順位相続人全員が相続欠格若しくは廃除又は相続放棄により相続権を失った場合を含みます。)には、被相続人の直系尊属(父母、祖父母等)が、相続人となります。ただし、親等の異なる直系尊属が複数ある場合には、親等が近い者が優先して相続人となり、親等が遠い者は相続人とはなりません。また、同親等の直系尊属が複数ある場合には、それぞれが同順位で共同相続人となります。 直系尊属には、血縁関係のある父母、祖父母、曾祖父母等のほか、養子縁組による養父母、養祖父母等が含まれますが、特別養子縁組により養親の子になった被相続人の実の父母、祖父母、曾祖父母等は含まれません。 なお、第2順位相続人となるべき直系尊属が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格若しくは廃除により相続権を失った場合であっても、代襲相続は発生しません。 【参考】民法第887条、民法第889条、第898条 第1順位相続人(代襲相続人を含みます。)に該当する者も第2順位相続人(代襲相続人を含みます。)に該当する者もいない場合(第1順位相続人及び第2順位相続人全員が相続欠格若しくは廃除又は相続放棄により相続権を失った場合を含みます。)には、被相続人の兄弟姉妹が、相続人となります。兄弟姉妹が複数あるときは、それぞれが同順位で共同相続人となります。 兄弟姉妹には、父母を同じくする兄弟姉妹のほか、被相続人の父母との養子縁組による兄弟姉妹及び父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹が含まれます。 なお、相続人となるべき兄弟姉妹が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格により相続権を失った場合には、その者の子(被相続人の甥又は姪)がこれを代襲して相続人となります。ただし、兄弟姉妹の代襲者が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格により相続権を失った場合であっても、再代襲は生じません。 【参考】民法第887条、第889条、第898条 被相続人の配偶者は、他の相続人と同順位で常に相続人となります。 【参考】民法第890条 推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が次のいずれかに該当する場合には、その推定相続人は相続人となることができません。これを「相続欠格」といいます。 (1)故意に被相続人又は先順位若しくは同順位の相続人を殺害し、又は殺害しようとしたことを理由として、刑に処せられた場合 (2)被相続人が殺害されたことを知りながら、これを告発せず、又は告訴しなかった場合(是非の弁別がない場合、又は殺害者がその者の配偶者若しくは直系血族であった場合を除きます。) (3)詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、又はその遺言を撤回し、取り消し、若しくは変更するのを妨害した場合 (4)詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、又はその遺言を撤回させ、取り消させ、若しくは変更させた場合 (5)相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した場合 【参考】民法第891条 遺留分を有する推定相続人(第1順位相続人又は第2順位相続人)が被相続人を虐待し、若しくは被相続人に重大な侮辱を加えたこと又は当該推定相続人にその他の著しい非行があったことを理由として、被相続人が家庭裁判所にその推定相続人の廃除を申し立てた場合には、その推定相続人は相続人となることができません。 また、被相続人が生前に遺言で特定の推定相続人を廃除する旨の意思表示をしており、被相続人の死亡後に、遺言執行者がその遺言の内容に基づいて家庭裁判所にその推定相続人の廃除を申し立てた場合にも、その推定相続人は相続人となることができません。この場合には、推定相続人の廃除の効力は、被相続人の死亡の時にさかのぼって生じることとされています。 なお、被相続人は、いつでも、家庭裁判所に推定相続人の廃除の取消しを申し立てることができることとされています。また、被相続人が生前に特定の推定相続人を廃除していた場合において、遺言にその推定相続人の廃除を取り消す旨の意思表示があるときは、遺言執行者は、その遺言の内容に基づいてその推定相続人の廃除の取り消しを家庭裁判所に申し立てなければならないこととされています。 ※ 家庭裁判所における廃除又は廃除の取消しの申立てに関する手続については、当事務所では、業務をお取扱いすることができません。 【参考】民法第892条~第894条
法定相続人の区分 相続人となる者 代襲 再代襲 第1順位相続人 被相続人の子(非嫡出子及び養子を含みます。) ○ ○ 第2順位相続人 被相続人の直系尊属(父母(養父母を含み、特別養子縁組により養親の子となった被相続人の実の父母を除きます。)、祖父母、曾祖父母等) - - 第3順位相続人 被相続人の兄弟姉妹(養子縁組による兄弟姉妹及び父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹を含みます。) ○ - 配偶者相続人 被相続人の配偶者 - -
最終更新日:2019年11月05日