相続分

法定相続人が承継する相続財産の割合(以下「相続分」といいます。)は、民法(明治29年法律第89号)に規定されており、これを「法定相続分」といいます。被相続人が生前に遺言による別段の意思表示をしていない場合には、原則として、各相続人は、その法定相続分の割合に応じ、被相続人の財産を承継することとなります。ただし、共同相続の場合には、共同相続人全員の遺産分割協議により、法定相続分とは異なる割合で各相続人の相続分を定めることもできます。

【参考】民法第899条、第907条

【参考】民法第900条

被相続人の子のみが相続人である場合には、子は、被相続人の財産の全部を承継します。この場合において、子が複数あるときは、各子の法定相続分は、被相続人の財産を子の人数で割った割合となります。

【参考】民法第900条

被相続人の配偶者のみが相続人である場合には、配偶者は、被相続人の財産の全部を承継します。

被相続人の直系尊属のみが相続人である場合には、直系尊属相続人は、被相続人の財産の全部を承継します。この場合において、直系尊属相続人が複数あるときは、各直系尊属相続人の法定相続分は、被相続人の財産を直系尊属相続人の人数で割った割合となります。

【参考】民法第900条

被相続人の兄弟姉妹のみが相続人である場合には、兄弟姉妹は、被相続人の財産の全部を承継します。この場合において、兄弟姉妹が複数あるときは、各兄弟姉妹の法定相続分は、被相続人の財産を兄弟姉妹の人数で割った割合となります。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母の両方を同じくする兄弟姉妹の法定相続分の2分の1となります。

【参考】民法第900条

被相続人の配偶者及び子が相続人である場合は、配偶者及び子の法定相続分は、それぞれ被相続人の財産の2分の1となります。この場合において、子が複数あるときは、各子の法定相続分は、被相続人の財産の2分の1をさらに子の人数で割った割合となります。

【参考】民法第900条

被相続人の配偶者及び直系尊属が相続人である場合には、配偶者の法定相続分は被相続人の財産の3分の2、直系尊属の法定相続分は被相続人の財産の3分の1となります。この場合において、直系尊属相続人が複数あるときは、各直系尊属相続人の法定相続分は、被相続人の財産の3分の1をさらに直系尊属相続人の人数で割った割合となります。

【参考】民法第900条

被相続人の配偶者及び兄弟姉妹が相続人である場合には、配偶者の法定相続分は被相続人の財産の4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は被相続人の財産の4分の1となります。この場合において、兄弟姉妹が複数あるときは、各兄弟姉妹の法定相続分は、被相続人の財産の4分の1をさらに兄弟姉妹の人数で割った割合となります。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母の両方を同じくする兄弟姉妹の法定相続分の2分の1となります。

【参考】民法第900条

被相続人の子に代襲相続が発生している場合の代襲相続人の法定相続分は、被代襲者である被相続人の子が受けるべきであった相続分と同じとなります。また、代襲相続人が複数いる場合には、それぞれの代襲相続人の相続分は、被代襲者が受けるべきであった相続分をさらに代襲相続人の人数で割った割合となります。

同様に、被相続人の子に代襲相続が発生している場合において、代襲者に再代襲相続が発生している場合の再代襲相続人の法定相続分は、代襲者が受けるべきであった相続分と同じとなります。また、再代襲相続人が複数いる場合には、それぞれの再代襲相続人の相続分は、代襲者が受けるべきであった相続分をさらに再代襲相続人の人数で割った割合となります。

【参考】民法第900条、第901条

被相続人の兄弟姉妹に代襲相続が発生している場合の代襲相続人の法定相続分は、被代襲者である被相続人の兄弟姉妹が受けるべきであった相続分と同じとなります。また、代襲相続人が複数いる場合には、それぞれの代襲相続人の法定相続分は、被代襲者が受けるべきであった相続分をさらに代襲相続人の人数で割った割合となります。

【参考】民法第900条、第901条

被相続人は、共同相続人の全員又は一部について、遺言で法定相続分とは異なった割合で相続分を定め、又は第三者にこれを定めることを委託することができます。このような方法によって共同相続人の相続分を定めることを「遺言による相続分の指定」といいます。

遺言による相続分の指定により定められた相続分は、民法の法定相続分に関する規定に優先して、他の共同相続人の遺留分を侵害しない範囲内で、有効となります。このような遺言による相続分の指定により定められた共同相続人の相続分を「指定相続分」といいます。

なお、被相続人が、共同相続人の一部についてのみ遺言による相続分の指定をしていた場合、遺言による相続分の指定を受けていない共同相続人の相続分は、法定相続分によることとされています。

【参考】民法第902条

被相続人の生前に被相続人の事業に関して労務若しくは財産を提供し、又は被相続人の看護し若しくは介護をするなど、被相続人の財産の維持又は増加のために特別な貢献をした者のことを「寄与者」といいます。共同相続人の中に寄与者がいる場合には、共同相続人全員の協議によりその寄与者の「寄与分」を定めて相続開始時における被相続人の財産から寄与分を差し引いたものを相続財産とみなし、寄与者の法定相続分又は指定相続分に寄与分を加算した額をその寄与者の相続分とすることとされています。

寄与分について、共同相続人全員の協議が調わない場合又は協議をすることができない場合には、寄与者は、家庭裁判所に対して、寄与分を定めるよう請求することができ、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めることとされています。

なお、寄与分は、相続開始時における被相続人の財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません。

※ 家庭裁判所における寄与分に関する申立ての手続については、当事務所では、業務をお取扱いすることができません。

【参考】民法第904条の2

共同相続人の1人が遺産分割の前にその相続分を第三者に譲り渡した場合には、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、第三者からその相続分を譲り受けることができることとされており、このような権利を「相続分の取戻権」といいます。

なお、相続分の取戻権は、1か月以内に行使しなければならないこととされています。

【参考】民法第905条

最終更新日:2019年11月05日